2011年のマリン業界を振り返る10大ニュース


マリンジャーナリスト会議では、当会のメンバー、また当会が選んだ一部のマリン業界関係者35名を対象とした調査を元に、一年のマリンレジャーや海事の世相をニュースで振り返る「マリン10大ニュース」をまとめました。

●マリンジャーナリスト会議が作成した「2011年マリントピックス一覧」の中からこれと思うマリンレジャー、スポーツの話題、できごとの3項目を選んでいただき、ファクス、およびインターネットメールにて回答を回収。
●「2011年マリントピックス一覧」は、2011年1月から11月に発行されたマリン専門誌、一般紙・誌の記事、見出し、およびインターネットを元に作成。
●ランキング算出方法
1位=5点、2位=3点、3位=1点とし、合計得点の多い順にランキングを決定した。


【2011年マリン10大ニュース・ランキング】

1位:東北地方太平洋沖地震発生で東北地方に壊滅的被害
2位:間寛平さん、世界一周41040kmを完走
3位:宮古・宮古商にヨット寄贈 篤志家、高校東北大会用の新艇
3位:斉藤実さん、8度目の世界一周で最高齢・最多記録更新
5位:「絆」胸に出帆 被災の東北大ヨット部、12艇寄贈受け
6位:プレ五輪で女子470級の近藤/田畑が金メダル
6位:天竜川下り舟転覆で、死者5人、負傷者4人
8位:漁船修理の拠点を被災地に整備
8位:津波被害の小名浜マリーナ解散へ
10位: ウエイクボード世界ツアーで17歳の日本人選手が初優勝
10位:JGFA名誉会員・服部善郎さん死去



【2011年マリン10大ニュース:詳細/回答者のコメント】

1位:東北地方太平洋沖地震発生で東北地方に壊滅的被害
3月11日14時46分18秒、宮城県牡鹿半島の東南東沖130kmの海底を震源として東北地方太平洋沖地震が発生した。日本における観測史上最大の規模、マグニチュード(Mw) 9.0を記録し、震源域は岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200kmの広範囲に及んだ。この地震により、場所によっては波高10m以上、最大遡上高40.5mにも上る大津波が発生、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。また、大津波以外にも、地震の揺れや液状化現象、地盤沈下、ダムの決壊などによって、東北と関東の広大な範囲で被害が発生し、各種ライフラインも寸断された。2011年(平成23年)9月11日時点で、震災による死者・行方不明者は約2万人、建築物の全壊・半壊は合わせて27万戸以上、ピーク時の避難者は40万人以上、停電世帯は800万戸以上、断水世帯は180万戸以上に上った。
■回答者コメント
歴史的に起こりえるとされて来た大津波への対策を改めて思い知らされた。(市川和彦/フリーランス)/今年は3月11日の大地震、そして福島原発事故に尽きると思う。自然の脅威を再確認すると同時に、被災者のご冥福を祈るしかない。(残間正之/残間事務所)/歴史的に起こりえるとされて来た大津波への対策を改めて思い知らされた。(市川和彦/フリーランス)/震災に関する多くのニュースはどれも大切なもの。私たちが心から向き合うべきこと、立ち直るべきこと、そしてやらなければならないことを考える。自然に対する謙虚な姿勢と、人として助け合う、歩むべき道を、自然豊かな島国に住む私たちは共に行かなければならない。(三浦恵美里/㈱ミウラ・ドルフィンズ 代表取締役)/海のイメージを大きく損なった出来事ですが、ピンチはチャンス。注目度が上がったこの時期に海に関して正しい認識を持っていただけるよう取り組みたい。(江上真/『あまべ』編集長 NPO法人かまえ ブルーツーリズム研究会)

2位:間寛平さん、世界一周41040kmを完走
マラソンとヨットで地球を一周する「アースマラソン」に挑戦していたタレントの間寛平さん(61)が、スタートから766日目となる1月21日夜、大阪でゴールした。 2008年12月に大阪市の「なんばグランド花月」をスタートし、太平洋?北米大陸?大西洋?ユーラシア大陸の順に18カ国を走破。途中、ガン治療に伴う中断もあったが、1月4日にヨットで福岡に到着し、その後は陸路で大阪まで走りきり、4万1040kmの長い旅に終止符を打った。
【回答者コメント】
前人未到のチャレンジに拍手!(桑名幸一/海洋スペシャリスト)/暗いニュースの多かった今年、寛平さんは元気を与えてくれた。うれしいニュース。(匿名)/マラソンとヨットで世界一周。途中、闘病するにあたり中断もありましたが、病気にも負けず、最後まであきらめずやりとげたということに大変感銘をうけました。(高崎円/B&G財団)

3位:宮古・宮古商にヨット寄贈 篤志家、高校東北大会用の新艇
震災の津波ですべての練習艇を失った宮古市の県立宮古、宮古商業の両高校ヨット部に28日、東北大会(7月16?18日・秋田県由利本荘市)出場用の新造5艇が、製作した兵庫県姫路市から届いた。県内出身で関東在住の男性篤志家が寄贈した4艇と宮古高OBB会からの1艇で、早速、宮古高の部員らが海に浮かべて新艇の感触を確かめた。両校ヨット部は津波で計40艇近くを流された。窮状を知った篤志家が大会用のFJ級2艇ずつ、宮古高OB会も宮古高への同型1艇を姫路市のメーカーに発注した。5艇は18時間かけて陸路運ばれ、市内のリアスハーバー宮古に到着。篤志家の代理の男性は「明るく元気に乗り、被災者に希望を与えてほしい」とのメッセージを部員らに伝えた。ヨットは、マストやセールなどの付属品も入れると1艇200万円以上はする。これまで全国から寄贈された中古の6艇で練習を続けてきた宮古高ヨット部主将の三浦幸也君(17)は「インターハイ出場目指して頑張る」と真っ白な船体を包むビニールをはがした。来週には宮古商高に、関西の慈善団体からもう1艇が届けられるという。
【回答者のコメント】
被災地のセーラーへの支援活動の起爆剤となったのが。震災支援団体「OPERATIONヨットノトモダチ」が行ったこの活動だったと思う。滋賀県の高校生から岩手県の高校生へFJ級を贈る支援をした、この素晴らしい活動は多方面に伝播した。それを報じた各社マスコミも、影ながら支援活動の一助になれたと思う。(中村剛司/舵社/Kazi編集部編集部員)/高校や大学のヨット部への艇の寄贈の話はたくさんありますが、そのすべての代表として選びました。(馬渡健治/華山ヨット工房)/海の仲間の素晴らしさを実感しました。(市川和彦/フリーランス)

3位:斉藤実さん、8度目の世界一周で最高齢・最多記録更新
ヨットで単独世界一周の航海を続けていた斉藤実さん(77)が9月17日、神奈川県横浜市の横浜みなとみらいぷかりさん橋に帰港し、自身の持つ「最高齢」と「最多」の単独世界一周のギネス記録を更新した。 39歳でセーリングを始めた斉藤さんは、57歳で初めて単独世界一周を成し遂げ、2005年6月に71歳で7度目の世界一周に成功し「最高齢」と「最多」のギネス記録を樹立。自らの記録を更新すべく8度目の世界一周に挑み2008年9月に横浜を出航していた。
【回答者のコメント】
人生に一度でも、それぞれ単独で世界一周をすることは並大抵のことではありません。それが斎藤実さんはすでに8周もした。しかも、今回の航海は潮も風も逆となる西回りでの世界一周。参考ですが、山の世界ではエベレストに6回登ったという日本人がいますが、日本では最多記録となり偉業だそうです。(田久保雅己/舵社/常務取締役)/77歳という高齢にも関わらず、8度目の世界一周を成し遂げた斎藤氏の、冒険心とバイタリティーは尊敬に価する。(岡本一明/㈱ワールドジェットスポーツマガジン社)/最高齢と最多、ともかく快挙。(清水宗己/㈱清水清宗己事務所代表)/間寛平さんと同じですが、斎藤さんの飽くなき夢を追い続ける姿が、多くの人に勇気とエネルギーを与えました。また人類の新しい海の歴史を刻んだ。(三浦恵美里/㈱ミウラ・ドルフィンズ 代表取締役)

5位:「絆」胸に出帆 被災の東北大ヨット部、12艇寄贈受け
東北大(仙台市)のヨット部が2日、北海道小樽市で開かれている「全国七大学総合体育大会」に出場した。津波ですべてのヨットを失ったが、他大学の支援などで出場がかなった。チームのシャツにプリントした「絆」という言葉を胸に、海に向かった。 あの日、宮城県名取市閖上地区の沖で練習をしていた部員は避難して全員無事だった。ヨットを引き揚げ、津波を警戒して海から離れた。しかし、同県七ケ浜町にあった合宿所と、すべてのヨットは流された。一時は活動を中断せざるを得なかった。 その後、事情を知った九州大など「ヨット仲間」から次々とヨットが寄贈され、現
【回答者のコメント】
ヨットの支援は高校生だけに留まらず、大学ヨットでも活発さを見せた。取材を通して、東北にヨ470とスナイプを贈った九州大の主将と話す機会を得たが、七大戦を超えた学生同士の深い絆に感銘をうけた。その後、学連ヨット部各部からも多数の支援艇があり、東北各校がインカレに出場できたことも嬉しかった。(中村剛司/舵社/Kazi編集部)/東日本大震災で多大な被害を受けたなか、助け合う意識と力を感じる。(細井正幸/B&G財団)

6位:プレ五輪で女子470級の近藤/田畑が金メダル
8月12日、ロンドン五輪のセーリング競技会場となるウェイマスで行われた、ロンドンオリンピックのテストイベント(プレ五輪)で、日本の近藤愛/田畑和歌子(アビームコンサルティング所属)が470級女子で金メダルを獲得した。 同大会はオリンピックの前年の同時期に同じ海面を使って行われるオリンピックのテストイベントで、オリンピック本番と同様のレベルで行われるオリンピックの前哨戦。 日本からは7種目、7チームが参加し、470級男子では松永鉄也/今村公彦(スリーボンド所属)が4位に入賞している。
【回答者のコメント】
ヨット界には、オグシオならぬ、「コンタバ」がいる!日本のお家芸、470級での躍進はうれしさも100倍。ぜひともロンドンでメダルを獲得し、セーリング界全体を盛り上げて欲しいと思います。(中村剛司/舵社/Kazi編集部編集部員)/プレ五輪での優勝は、来年の本大会につなぐ大きな意味のある功績だと思います。また、位ニュースが多い中、これはマリン業界にとっても取り上げるべきニュースだと思っています。(小川和幸/㈱サーフレジェンド)/明るいニュースも欲しいので選びました。新ペアは来年も活躍してくれると期待しています。(馬渡健治/華山ヨット工房)/セーリング業界を賑やかすためにも、本番での「金」を期待できる明るい話題であった。(板倉一寿/B&G財団)/日本の女子No.1とNo.2が組んだドリームチーム。本番でも金メダルを獲得したい。男子も頑張れ!(匿名)

6位:天竜川下り舟転覆で、死者5人、負傷者4人
8月17日、静岡県浜松市の天竜川で、川下り舟〈第十一天竜丸〉が転覆し23人が川に投げ出され、5人が死亡、4人が重軽傷を負う大事故となった。 船頭をしていた大畑茂雄さん(61)の説明では、転覆した舟は渦に進入後、渦の流れに沿うように岸壁から離れ下流へ向きを変えようとしたが、何らかの理由で向きが変わらず、そのまま船首から岸壁に突っ込み後方左舷から浸水して転覆した。12歳未満の子どもに義務づけられているライフジャケットだが、6人乗っていた子どものうち、着用していたのは1人だけだった。
【回答者のコメント】
一般メディアで船に対するマイナスイメージが大きく取り上げられてしまったニュース。安全確保が大前提であるはずの商業運行船での、あまりの意識の低さに愕然とした。一般にも広く水上での安全意識が広まることを願う。(今村信/㈱舵社/『月刊ボート?楽部』編集部)/遠州地域では、この天竜川の事故や浜名湖でのボート転覆事故により、多くの尊い人命が失われた。この事故により、ライフジャケットの重要性が改めてクローズアップされるということにつながった。(遠藤卓男/をウォーターセーフティー ニッポン 普及促進部長)/12歳未満の子供にライフジャケット着用をおろそかにしてしまったことにより死者が拡大してしまった事故。ライフジャケット着用義務づけ再認知とともに、ライフジャケット着用の大切さを私自身勉強させられました。(高崎円/B&G財団)

8位:漁船修理の拠点を被災地に整備
船舶メーカー等からなる業界団体は、岩手県、宮城県の沿岸およそ10か所に、震災で壊れた多くの漁船を修理するための拠点を整備する方針を決めた。できれば今月中にも修理を始められるよう整備を急ぐことにしている。今回の大震災では、岩手県や宮城県など津波の被害を受けた沿岸部で、およそ1万9000隻の漁船が被害を受け、漁業への大きな影響が懸念されている。 海洋水産システム協会はこうした状況を受け、全国の造船所などへ建造可能な漁船・小型船舶の情報提供を呼びかけていた。また、被害を受けた漁船の中には、修理によって使用可能となるものがあるものの、被災地近隣の造船所も被害を受け、修理が不可能な状況となっている。 このため、前述の海洋水産システム協会と、さらに日本舟艇工業会は、被災地に必要最小限の設備を整えた応急的な漁船の修理拠点を、新たに10カ所程度設置し、被災した造船所の技術者に作業を行ってもらうことを目指す。
【回答者コメント】
マリン業界として東北の漁業復旧に協力していることの象徴的トピックスです。(馬渡健治/華山ヨット工房)/暗い話題が多かった1年、このような行動を業界団体MJCが行うことに意義があると感じた。(板倉一寿/B&G財団)

8位:津波被害の小名浜マリーナ解散へ
いわき市泉町下川にあるいわきサンマリーナの運営会社「小名浜マリーナ」(社長、渡辺敬夫・いわき市長)は「事業継続が困難」として、29日の株主総会に会社解散議案を提案する。同市などによると、同マリーナは津波で壊滅的な被害を受け、係留していた大型ヨットなど約150隻がすべて流され、桟橋やクラブハウスも大破した。 小名浜マリーナは、同市や県、ヤマハ発動機などが出資した第三セクター。96年からいわきサンマリーナを運営してきた。ここ数年は黒字決算だった。
【回答者コメント】
東日本大震災の被害状況はショッキングでした。中でも福島の小名浜「いわきサンマリーナ」の震災前と震災後の写真を見せられたときには愕然としました。昨年(2010年)のビルフィッシュトーナメントを取材したときに、桟橋にずらりとボートが並んでいた風景がなくなっていた光景は、腹をえぐられたようにつらかったです(田久保雅己/舵社/常務取締役)/黒字だったマリーナの解散は残念の一言。公的支援が欲しかった。(市川和彦/フリーランス)/東日本大震災で甚大な被害を受け、残念です。復興に期待していましたが。(桑名幸一/海洋スペシャリスト)/震災直後、マリーナの惨状を見て津波の恐ろしさを改めて実感した。また、ひとりの人的被害を出さなかったマリーナの対応で普段からの備えの大切さも痛感した。(匿名)/黒字経営に転じていただけに残念。このような被害のなかにあっても「海に出たい」と願っていたオーナーは多い。現在は地元の有志が「いつかマリーナを復興させたい」と草の根的な活動を続けている。解散したとはいえ経営に参画してきた自治体、企業は継続的に何らかの支援をしていただきたいと願う。(瀧学/玄株式会社)


10位: ウエイクボード世界ツアーで17歳の日本人選手が初優勝
4?5月、米国ジョージア州で開催されたウエイクボードの世界大会で、静岡県御殿場市の17歳・手塚翔太さんが総合優勝を果たした。手塚さんが参加したのは、14?18歳までのクラスで、複数の大会の総得点を競う「2011ワールドJr.pro.MENプロツアー」で、日本人の優勝は初めて。 手塚さんは父親の影響で8歳からウエイクボードをはじめ、最年少の12歳でプロ転向。昨年はアジアプロツアーで優勝した実績を持つ。
【回答者のコメント】
単純に“エェ ニュースやんかぁ!” (Tadami/マリン・イラストレーター)/日本人が世界大会で優勝を飾る明るいニュース。こういった時勢に追いても、明るいニュースが存在し、来年も明るいニュースが続くことを願って。(匿名)


10位:JGFA名誉会員・服部善郎さん死去
釣りタレントで、ジャパンゲームフィッシュ協会名誉会員の服部善郎さんが22日午前9時9分、膵臓(すいぞう)がんで死去した。82歳。 服部さんは1928年生まれ。早稲田大学在学中に釣りで全国を行脚し、各地に伝わる多彩な釣り技を取得。読売ニュース映画ディレクターを経て、日本初の本格的TV釣り番組「日本の釣り」を演出し、自ら出演。その後は深夜番組「11PM」の釣りコーナーを1960年代から23年間担当し、日本はもとより世界各地を釣り歩き、日本の茶の間に世界の釣りを紹介してきた。 2011年に日本人として2人目となる「IGFA(国際ゲームフィッシュ協会)釣りの殿堂」入り。「IGFAの釣り殿堂」には「釣魚大全」の著者として知られるアイザック・ウォルトン、アーネスト・ヘミングウェイなどが入っている。
【回答者のコメント】
「11PM」の釣りコーナーで多くの夢を与えてくれた功績は大きい。釣りを取り巻く環境問題に対してもっと語っていただきたかった。(残間正之/残間事務所)/つい最近までお元気なお姿をお見かけしていただけに、訃報を聴いて驚きました。ボートフィッシングの普及・振興の面で多大な功績を残された。(匿名)/経験や年齢的な貫禄もお持ちだったが、最近のメディアでは見られない骨太さ、奥深さを感じさせてくれる偉大な「釣り名人」だったと思う。いま活躍されている釣りタレントの方々も是非いつまでも釣りを続けられ、この域に達して欲しいと願う。(瀧学/玄株式会社)