2021年の「マリン10大ニュース」を選定いたしました。選考に当たっては、2021年1月1日から11月30日までに国内で報道された主なマリン関連ニュースを事務局においてリスト化。そのリストを元に、当会会員による投票と審議によって決定いたしました。 ※転載等は自由です。
11位から20位までのニュースについてはこちらかご覧いただけます。
>2021年マリン10大ニュース〈11〜20位〉
【1位】
海洋冒険家の白石康次郎さん、世界一周ヨットレースで初完走(2月)
フランス西部レサーブルドロンヌから単独無寄港無補給で世界を一周するヨットレース「ヴァンデ・グローブ」で、海洋冒険家の白石康次郎さん(53)が11日、16位でゴールした。「海のエベレスト」とも呼ばれる世界有数の過酷なレースでアジア勢の完走は初めて。
【2位】
辛坊治郎さん、太平洋往復横断。無事に日本に帰還(8月)
2021年4月9日に、ヨットKaorinV(カオリンファイブ)号で淡輪ヨットハーバーを出港。度重なる危機を乗り越えて、6月16日(日本時間)にアメリカ・サンディエゴのシェルターアイランドのヨットハーバーに到着し、太平洋単独無寄港横断に成功した。その後、辛坊さんは7日間の休養と整備を経て、再びヨットでの日本帰国を目指して出発。8月24日に母港の淡輪ヨットハーバーに帰港。復路の太平洋横断を成し遂げた。
【3位】
五輪・サーフィンで五十嵐カノアが “銀”、都筑有夢路が “銅”(7月)
東京オリンピックは7月27日、今大会で初めて採用されたサーフィンの決勝が行われ、男子の五十嵐カノア(23)が銀メダルを獲得。女子の都筑有夢路(20)も銅メダルを勝ち取った。
【4位】
硫黄島近海の海底火山「福徳岡ノ場」で11年ぶりに噴火(8月)
小笠原諸島の硫黄島の南にある海底火山「福徳岡ノ場」で13日、11年ぶりに噴火が確認された。気象庁によると、13日午前6時20分ごろ、気象衛星「ひまわり」が、硫黄島の南およそ50キロにある海底火山「福徳岡ノ場」から噴煙が上がったのを観測したほか、海上保安庁も13日午後に航空機で観測を行い、噴火を確認した。この噴火で噴出した軽石が、沖縄県などに押し寄せて被害が出ている。
【5位】
堀江謙一さん、エンジンなしのヨットで単独太平洋横断挑戦へ(11月)
1962年に世界で初めてヨット〈マーメイド号〉による単独太平洋横断航海を成し遂げ、映画化された航海記『太平洋ひとりぼっち』で世に知られた堀江謙一さんが、その航海から60年目にあたる来年、当時の航海と同じ19フィートのヨットでの太平洋横断航海に挑戦することを発表した。成功すれば83歳での快挙となる。
【6位】
燃料電池ボートに高圧水素を充填…ヤンマーが世界初の70MPa(10月)
ヤンマーパワーテクノロジー(YPT)は10月13日、燃料電池システムを搭載した実証試験艇を用いて、世界初となる船舶への70MPa高圧水素充填を実施。大阪・関西万博会場予定地と市内沿岸部の観光地を結ぶ航路での航行試験を行った。
【7位】
2024年パリ五輪外洋種目はカイトに変更(6月)
ワールドセーリング(国際セーリング連盟)は、2024年パリ五輪のセーリング競技の種目について男女混合外洋ダブルス(種目名:Mixed Two Person Keelboat Offshore Event)と男女混合カイトボーディングの2種目に代わり、男子カイトボーディングと女子カイトボーディングの2種目を採用することについて、IOCから承認の通知があったという。同日にスイスのローザンヌで行われていた、IOCの理事会での決定を受けてのもの。
【8位】
五輪・セーリングで日本勢、男女とも7位(8月)
オリンピックセーリング競技は4日、470級の最終レースが行われ、女子の吉田愛、吉岡美帆組(ベネッセ)は8着に入り、総合7位に入賞し、オリンピックを終えた。男子の岡田奎樹(トヨタ自動車東日本)、外薗潤平(JR九州)組は6着で、同じく総合7位の入賞を果たした。
【9位】
セールGPフランス大会を日本が制す!シーズン二度目の優勝 (9月)
セールGP第5戦フランス大会の最終日となった9月12日、アメリカ、スペイン、日本が決勝レースに進出。風が弱く風向も触れ回る非常に難しいコンディションの中、序盤からアメリカがリードする展開だったが、徐々に風が落ちて行くなか、日本は風を掴みながら最終風下ゲート手前でアメリカを捉え、その後もスピードを維持した日本が快心の走りで2大会ぶりとなるシーズン2度目の優勝を飾った。
【10位】
G20環境相会合海洋プラごみ、条約づくり議論で合意(7月)
7月22日、主要20カ国・地域(G20)環境相会合がイタリア・ナポリで開かれ、海洋プラスチックごみ削減のために新たな国際条約などをつくる議論に参加していくことで合意した。2022年2月に開かれる国連環境総会で条約づくりの委員会を設ける方向で議論が進められることになる。
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潮気強き感動に感謝したい
中村剛司 ● マリンジャーナリスト会議・副座長
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振り返ってみれば、2021年のマリン業界は、ハッピーなニュースが多かった。長くつらいコロナ禍のトンネルはまだ抜けきっていないが、それらを跳ね返す海を愛する人々のパワーを強く感じた。
白石康次郎さんのヴァンデ・グローブ完走(1位)、辛坊治郎さんの太平洋往復(2位)、堀江謙一さんの再チャレンジ(5位)と、セールボートによる、オーシャンゴーイングかつアッパレな活躍や挑戦に耳目が集まった。さらに、パリ五輪種目のカイト変更(6位)、東京2020男女470級ともに7位入賞(8位)、セールGPの日本チーム2回優勝(同列8位)と、トップ10にセーリングボート関連ニュースが6件ランクインしたことにも驚いた。前回2020年は3件であった。
2021年の夏を熱くした東京2020セーリング競技であったが、期待通り男女470級でメダルの獲得があれば、また違ったランキングが完成したと想像する。オリンピック7位入賞。これが世界大会の順位ならもろ手を挙げて喜ぶはずが、4位以下への注目度が激減するのもオリンピックならでは、というところか。オリンピック関連では、サーフィン種目、五十嵐カノア選手の銀メダル、 都筑有夢路選手の銅メダルは、率直に感動した。ビジュアルも華やかな2人には、今後のマリン業界のスピーカーとして大いに活躍してほしい。
高圧水素充填を使ったヤンマーパワーテクノロジーの燃料電池システム搭載船(6位)、海洋プラごみ条約づくり合意(10位)と、SDGsで掲げられる目標と関連する環境問題は2件ランクイン。海底火山「福徳岡ノ場」の噴火(4位)は、8月の噴火からその後、軽石が沖縄諸島ほかへ漂着したとあり、多くのセーラー、ボーターの頭を悩ませた。コロナ禍もやや収まり、さて晩夏の海を楽しもうというタイミングであったにもかかわらず、リゾート地でのクルージングに急ブレーキをかける結果に。
圏外ではあったが17位の『釣りバカ日誌』連載1,000回達成や、21位以下ではあるが、佐々木希の船釣り挑戦&釣りコーデに驚きの声、に大いに注目した。国民的釣り漫画の記録達成や、人気タレントが海を楽しんでいることをSNSで発信してくれることは、なによりのマリンシーンの普及につながる。
一人のジャーナリストがやきもきしてもどうなる問題ではないが、発信に加えて、育成と普及はマリンシーンの急務であり、取り組んでいかなければならない重大な事由である。そういった意味で、1〜10位に入選し2021年の海を大いに盛り上げていただたいた関係者・各社には、手放しの賛辞をお送りしたい。
2021年も、潮っ気強き感動をありがとうございました。
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ストーリーがつながるセーリングの話題
菅仁良 ● マリンジャーナリスト会議・副座長
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10項目中6つがヨットのニュースとなった。まあ、いつものことではある。選考者にヨット好きが多いんだろう。
で、実は昨年の7位は、康次郎氏が11月にスタートしたというニュースだった。それが95日後に結実して、今年は①完走達成となったわけなんである。康次郎氏はすでに2年後の第10回大会挑戦を表明している。次の目標は8位だ。
さて、同様、昨年の9位は五輪セーリング470級女子の吉田吉岡組が、延期となった五輪へ「全力で準備」だった。それまで世界選手権などでの好成績が続き、金メダルへの期待からだったのだが、こちらは残念、7位入賞にとどまったというのが⑧のニュース。ま、これも予告と結果というわけだ。
で、次の予告が⑤である。航海に使う新艇マーメイドⅢは1962年の「太平洋ひとりぼっち」と同じサイズだそうで、ルートはサンフランシスコから西宮へと逆を辿る。60年が経てストーリーはつながっている。がんばれ、堀江さん。
②の辛坊さんはサンディエゴ滞在1週間で一気に往復してしまったが、向こうで最初のパートナーであったブラインドセイラーの岩本光弘さんの出迎えを受けた。これもストーリーがつながっている。
良いニュースがつながっていく新年を期待して選評とします。
11位から20位までのニュースについてはこちらかご覧いただけます。
>2021年マリン10大ニュース〈11〜20位〉