マリンジャーナリスト会議では2015年を振り返り、「マリン十大ニュース」を選定しました。2015年、あなたが活動する海ではどんなことが起こりましたか?
1位
15年ぶりに日本からアメリカズカップに挑戦
(2015年4月)
「ソフトバンク・チーム・ジャパン」(STJ)がアメリカズカップに挑戦すると4月30日に発表。日本艇の挑戦は2000年以来で通算4度目。2015年7月から始まったポイントレースに出場し、実戦でトレーニングを続ける。アメリカズカップ本戦は2017年に英領バミューダで開催され、挑戦艇になれば前回覇者の米国チームと対戦する。ニッポンチャレンジのクルー経験がある早福和彦氏が総監督を務め、スキッパーはニュージーランドのディーン・バーカー。ソフトバンクがスポンサーとして支援する。エントリークラブは「関西ヨットクラブ」。11月には日本人クルーを公募し、吉田雄悟さん(31歳、ロンドン五輪470級男子代表)、笠谷勇希さん(26歳、2015年の全日本選手権ダブルスカル(ボート競技3位)が採用された。近年のアメリカズカップはモノハル時代とは大きく様変わりしているが、フォイリングカタマランを使ってのマッチレースは迫力十分。ヨットに興味がない層にとっても、ビジュアルの訴求力は高く、話題になりそうだ。
2位
USオープン・オブ・サーフィン2015で大原洋人選手が日本人初優勝
(2015年8月)
8月2日に、米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のハンティントンビーチで開催されたプロサーフィンコンテスト、WSL(ワールド・サーフ・リーグ)-QS10,000「VANS USオープン・オブ・サーフィン」で、千葉県出身でハワイ在住のプロサーファー・大原洋人(18歳)が優勝した。同コンテストは最も古い歴史を持つコンテストの一つであり、世界最大規模の集客数を誇るこの大会には、2015年、世界最高峰のプロサーフィンリーグであるWSLのチャンピオンシップ・ツアーに参戦しているプロサーファーも出場していたが、それらの有力選手をおさえての優勝であり、日本サーフィン史上初の快挙となった。残念ながら、大原洋人は、2016年度のWSLチャンピオンシップ・ツアーの参戦権は得ることはできなかったものの、日本人サーファーも世界レベルで戦える実力のあることが証明された。また、サーフィン界のみならず、日本の他のマリンスポーツにとっても大きなステップとなった。サーフィンは2020年東京オリンピック追加種目の候補となっており、今後の一層の飛躍が期待される。
3位
2020年東京五輪セーリング競技会場に江の島が決定
(2015年6月)
東京江東区若洲が予定地だった2020年東京五輪セーリング競技の会場が、神奈川県藤沢市江の島に変更された。若洲の上空が羽田空港の航空管制下にあり、レースを撮影するヘリコプターの飛行に制限があることなどから代替地を探していたもの。セーリング競技の記録映像には空からの撮影が必須であり、若洲ではこの点が当初からネックとなっていた。若洲に代わり千葉県稲毛、愛知県蒲郡などが候補地となっていたが、1964年の東京五輪セーリング競技が開催された江の島が再び開催地に決まった。代替地探しに関しては国際セーリング連盟からもスタッフが来日し、現地を視察し決定した。日本を代表するマリンリゾート「湘南」が、世界から注目を集める一方、五輪期間中の夏場は海水浴客が多く交通渋滞が心配されるほか、宿泊施設が少ない江の島近辺での選手・運営スタッフなどの宿舎の確保、地元の漁業への影響に対する考慮など、課題も多い。
4位
ニュージャパンマリン、ユニマットプレシャスが、
日産マリーンの事業を継承
(2015年3月)
日産マリーンが2015年3月をもって大分県の工場を閉鎖し、プレジャーボート製造事業、および日産マリーンブランドの新艇とエンジンの販売を終了。国内では唯一のカタマラン(双胴船)プロダクションシリーズである「サンキャット」などを手がけてきた、およそ45年にわたるニッサンボートの歴史に幕を下ろした。5月末には、主に交通船などの建造を手掛ける三重県のニュージャパンマリンが、日産マリーンの生産設備および既存8モデルの生産型および知的財産権に関して事業譲渡を受け、6月から工場を本格稼働することを発表。同社は2015年秋から、自社ブランドとして8艇種の新ラインナップの建造を開始し、全国の販売店を通して艇体のみを販売する。ニューラインナップの一般へのお披露目は、2016年3月に開催される「ジャパン インターナショナル ボートショー 2016」を予定。なお、日産マリーンのボート製造・販売事業撤退とともに、日産系列が運営していた六つのマリーナ事業も終了。6月にユニマットプレシャスによる事業継承の合意がなされ、国内最大のマリーナチェーンが誕生した。
5位
470級女子吉田・吉岡組がセーリングのワールドカップで初優勝
(2015年9月)
ISAF(国際セーリング連盟)セーリングワールドカップ第5戦(2015年9月14日~20日、中国・青島)で、470級女子の吉田愛(34歳、株式会社ベネッセホールディングス所属)・吉岡美帆(25歳、同)組が優勝。ワールドカップでの日本チーム優勝は初。吉田・吉岡組は五輪代表チームにも内定しており、スキッパーの吉田愛選手にとっては北京、ロンドンに続く3度目の五輪代表となる。なお、本レースの2位には日本の山口祥世・畑山絵里組(ノエビア所属)が入り、日本勢が1位、2位を独占している。ISAFセーリングワールドカップは2105年から新システムになり、年間5レース(2015年はメルボルン、マイアミ、イエール、ウエイマス、チンタオ)+ファイナルレース(2015年はアブダビ)という構成。ファイナルにはワールドカップ各大会の勝者、大陸別1位、クラス別世界選手権1位が参加するディンギーヨットのエリート選手が集まるISAF最高峰の大会という位置付けとなる。
6位
夏のサメ騒動
(2015年8月)
2015年の夏は、茨城や千葉、神奈川、東京、静岡と、サメの目撃情報が相次ぎ、各地で遊泳禁止やサメ対策のネットを張るなど、対応に追われた。例年であれば海水浴客でにぎわう海辺は、客足が激減し、海の家などでは売り上げに大きな影響を及ぼした。見つかったサメはシュモクザメやメジロザメで、例年、夏の水温が上がる時期になると本州沿岸にも北上するが、2015年はテレビなどで大きく報道されたこともあり、各地で目撃情報が増えたのではとの見方もあった。シュモクザメやメジロザメは、人食いザメではなく、海辺で海水浴をする程度なら恐れることはないといわれるが、万一に備え、遊泳禁止の措置が取られた。ちなみに、7月には南アフリカのジェフリーズベイで開催されていたWSLチャンピオンシップ・ツアー第6戦のJ-Bayオープンのファイナルで、過去3度のワールドチャンピオンとなっているミック・ファニング(豪)がシャーアタックに遭った。すぐにPWC(水上バイク)で救助さたものの、その映像が生中継されたことも話題となった。このときのサメはイタチザメとみられ、いわゆる人食い鮫の一種だった。
7位
東京湾大感謝祭2015に、8万8千名来場
(2015年10月)
「東京湾再生官民連携フォーラム」のプロジェクトの一つとして2013年からスタートし、3回目を迎えた「東京湾大感謝祭2015」が、2015年10月23~25日に、神奈川県横浜市の横浜赤レンガ倉庫で開催された。屋内会場では、「第16回東京湾シンポジウム―東京湾の水環境に関する研究―」や、落語を通じて東京湾の今昔を知る「東京湾大落語会」が開かれたほか、環境学習コーナー、参加型ワークショップを実施。一方、屋外会場では、国交省・関東地方整備局、横浜市、長崎県平戸市などの行政や関連企業が、子ども向けの体験学習コンテンツや地場産品販売などのブースを出展。また、プレジャーボートやSUP(スタンドアップパドルボード)などの体験試乗会、ハゼ釣り体験などの体験メニューも人気を博した。さらに、特設ステージでは、ライブや“ゆるキャラ”によるパフォーマンスが行われるなど、内容盛りだくさん。24日正午のオープニングセレモニーでは、横浜港に停泊中の船舶が一斉に汽笛を鳴らした。最終日には、強風による一部コンテンツの中止などがあったものの、3日間とも晴天に恵まれ、合計8万8千人の来場者を記録した。
8位
南極大陸の氷は増加中、NASAが発表
(2015年11月)
NASAの気象学者チームにより「南極大陸の氷は増加中」という従来の定説を覆す研究成果が発表された。人工衛星から計測した南極氷床の高さの変化を調べて結論が導き出されたもの。1万年前から続く降雪の増加により、積み重なった雪が圧縮されて氷が増加しているとみられる。ただし、この氷の増加は、南極大陸全体で一律に起きているわけではなく、大陸東部や内陸部の一部にみられるものという。また、地球全体の温暖化傾向そのものが否定されているものでもない。さらに、今回の調査結果については、複雑な南極大陸の地形を1個の衛星だけで観測するには無理があるとの反論もあるほか、近い将来に数メートルもの海面上昇を招く可能性があるとされる西南極氷床の崩壊を相殺するほどの増加ではないとの説もある。
9位
グッドライフアワード最優秀賞に「チーム美らサンゴ」
(2015年12月)
2004年より沖縄県内外の企業が集まって結成されたサンゴ再生プロジェクト「チーム美(ちゅ)らサンゴ」が、環境省が実施する「第3回グッドライフアワード」の環境大臣最優秀賞を受賞した。このグッドライフアワードは、日本各地で実践されている「環境と社会に良い暮らし」に関わる活動や取り組みを募集して紹介・表彰し、その活動や社会を活性化するための情報交換などを支援していくプロジェクト。第3回のテーマは「自然環境などの地域資源をいかした持続可能な社会づくり」だった。「チーム美らサンゴ」は沖縄県恩納村海域においてサンゴの育成活動を行っており、ダイビングのライセンスを持つ一般の参加者がサンゴの植え付けを体験できることが特徴。またダイバー以外でも、養殖サンゴの苗作りや、グラスボートに乗船して恩納村海域のサンゴ育成状況を観察を行うなど、海の環境に対して興味、関心を高めることを目的に啓発活動を行ってきた。発起人の一人である恩納村漁協・サンゴ部会長の銘苅(めかる)宗和さんは「この活動で大切なのは、サンゴの育成はもとより、参加者に環境への意識を高めてもらうことにあります。沖縄県はきれいな海があるから、多くの人が観光に訪れる。海の恩恵があればこそ観光も漁業も営みができる」と語っている。
10位
「世界海の日」を日本で開催
(2015年7月)
2015年は日本の国民の祝日「海の日」制定20周年にあたることから、IMO(世界海事機関)の「世界海の日」と合わせて、さまざまなイベントが開催された。「世界海の日」は、海上輸送の安全や海洋環境の保全などをテーマに、毎年9月末にIMO本部や世界各地で行なわれるイベント。2015年は日本で「世界海の日パラレルイベント2015」(7月20・21日)が神奈川県横浜市で行なわれ、「海事の教育及び訓練」をテーマとした国際シンポジウムを開催。そこでの議論の内容が「横浜宣言」としてまとめられた。そのほか、「海でつながるプロジェクト」(日本財団助成)として日本各地でさまざまなイベントが開催された。そのひとつ、全国各地の「地元の海」に対する意識を刺激するきっかけ作りとしてのポスターコンテスト、「海のポスターグランプリ――うみぽすGP」には、5月1日~8月16日の募集期間中に1,025点の応募があり、一般の部グランプリには宮崎倫加子さんの「鳥取砂丘」をテーマにした作品が選ばれた。
【11位以下のマリン関連ニュース】(順不同)
●「2020年東京パラリンピック」でセーリング競技は実施されず
●「日本ボートオブザイヤー2014」にトヨタ「ポーナム31」
●「2020東京五輪」の追加種目にサーフィンが選ばれるか
●茅ヶ崎第一中学校でサーフィンの早朝トレーニング活動開始
●ビーチクラブがお台場で活動開始
●シュノーケル事故が相次ぐ
●松方弘樹、361キロの超特大マグロを釣り上げる
●「タモリカップ東北大会」が嵐(ジャニーズ)の宮城公演の影響で中止
/富山大会は大成功
●クロマグロ、釣りも規制検討へ=全国で実態調査―水産庁
●「ザ・コーヴ」に対抗、反捕鯨活動追う映画「ビハインド・ザ・コーヴ」カナダで上映
●セーリング競技のワールドイベント、日本国内で相次いで開催
●映画「海難1890」公開へ
●パワーボートレース「芦ノ湖グリーンカップ」復活
●戸田建設が日本初の燃料電池船を開発
●国内でのPLB使用に関する法整備が完了
●「マリンカーニバル2015」が初開催
●ヨットレース「若大将カップ」初の開催
●「2016世界学生水上スキー選手権」開催地が秋田県大潟村に決定
●夏場のマリンレジャー中の事故者は、飲酒している者がまだ多い現状
●「水辺の安全教室」を全国で展開
●「東京湾海洋体験アカデミー」を初開催
●「オーシャンクリーンナップ」2016年、対馬沖で開始を発表
●古代ギリシャの「失われた島」を発見
●中国・台湾のサンマ大量漁獲
●土居愛実「レーザーラジアル級女子世界選手権」で8位
●「レッドブル・フォイリング・ジェネレーション」和歌山で開催
●震災で流出、ジョンストン環礁で発見されたジェットが復元、オーナーの元へ
■選定方法について
マリンジャーナリスト会議のメンバー、およびマリン専門誌記者を対象に「気になった2015年のマリン関連ニュース」を3件まで募集。「2015年ニュースリスト」を作成し、当会会員による投票でランク付けをしたものです。