マリンジャーナリスト会議

HOME > トピックス一覧 >

MJC(マリンジャーナリスト会議)が選んだ2024年マリン十大ニュース

MJC(マリンジャーナリスト会議)が選んだ2024年マリン十大ニュース

2024年12月20日

マリンジャーナリスト会議では、2024年の主なマリン(レジャー/舶用/海洋/漁業等)関連ニュースの中から、気になったニュース10テーマを選出。マリン十大ニュースとして選定しました。

 

1位
岡田奎樹/吉岡美帆がパリオリンピック・セーリング競技
男女混合470級で銀メダル

パリンオリンピックのセーリング競技の470級男女混合に出場していた岡田奎樹/吉岡美帆は予選3位で上位10チームによる決勝のメダルレースに臨み、順位を上げて銀メダルを獲得。日本勢のセーリング競技におけるメダル獲得は2004年のアテネ大会以来、20年ぶり。(8月)

 

2位
木村啓嗣さん、ヨットで東回り単独無帰港・無補給世界一周。
30年ぶりに日本人最年少記録を更新

木村啓嗣さんが、6月8日14時46分、2023年10月22日14時15分に単独無寄港無補給の世界一周を達成。記録は231日。24歳9カ月で白石康次郎さん以来となる30年ぶりに、日本最年少記録を更新した。(6月)

 

3位
日本の団体が初めて国際大会を主催
「WGP#1アジアン・チャンピオンシップ ラウンド1」が開催される

6月6日(木) から 9日(日) の4日間、大阪府二色の浜海浜緑地にて 「WGP#1アジアン・チャンピオンシップ ラウンド1」 が開催された。 選手ばかりでなく、多くの関係者やファン待望の日本で初の国際レースだった。(6月)

 

4位
今給黎教子さんが日本人女性初の単独無帰港世界一周に使用されたヨット「海蓮」が
公益社団法人日本船舶海洋工学会「ふね遺産」登録

歴史的で学術的・技術的に価値のある船舟類およびその関連設備を社会に周知し、文化的遺産として次世代に伝えるために日本海洋船舶工学会が行っている「ふね遺産」認定事業に、今給黎教子さんが1991年から翌年にかけて日本人女性として初めて世界一周した際に使用したヨット「海連」が認定された。小型ヨットとしては初めてで、女性の体格に合わせて工夫された艤装などが評価されたという。(9月)

 

5位
元日に能登半島地震発生。地盤隆起で漁業に大打撃、ボートパーク輪島も閉鎖へ
1月1日に発生した能登半島地震は、輪島市などの漁業にも大きなダメージを与えた。
輪島市内の漁港では海底が隆起し、海岸線が沖まで100メートル以上後退したところも。港を含めて以前海底だった部分が完全に海面から出た状態となった。1月23日の時点で漁港として使用できなくなったのは21漁港。漁船の転覆や沈没は146隻で、座礁16隻、船の一部損壊43隻、流出28隻が確認された。(1月)

 

6位
水上オートバイ航行支援アプリを国内初導入。ユーザーの安全航行、利便性の向上へ
ヤマハ発動機と日清紡ホールディングスが協業し、小型ボートの安全航行の支援などを目的に開発している航行支援アプリ「JM-Safety」に、「PWC専用モード(PWC=水上オートバイ)」を追加。国内初の「PWC航行支援アプリ」としてサービスを開始した。(11月)

 

7位
船舶免許の特定操縦免許が改正
主な改正事項は、これまで特定操縦免許を取得するために必要だった型旅客安全講習の講習時間が増え、必要な乗船履歴がない場合、小型旅客船・遊漁船に船長として乗船できる航行区域が平水区域に 限定されるなど、厳格化されている。(4月)

 

8位
大分空港でホーバークラフトが15年ぶりに復活
国内で唯一となるホーバークラフトの旅客航路が復活する。大分県が空港へのアクセス改善のため再び力を入れてきた。ホーバークラフトは浮上航行する水陸両用船で、1960年代後半以降、熊本―島原や瀬戸内海の宇高ルートなど各地で運航されていたが、橋の建設や代替交通機関の利用拡大で徐々に姿を消した。(11月)

 

9位
水産庁が海業の推進取り組み地区を決定
水産庁は、海業(うみぎょう)を普及・推進するために、令和5年12月4日から令和6年1月31日までの期間で、「海業の推進に取り組む地区」を募集し、54地区が決定した。海業は海や漁村の地域資源の価値や魅力を活用する事業で国内外からの多様なニーズに応えることにより、地域のにぎわいや所得と雇用を生み出すことが目的。5年間でおおむね500件の漁港における新たな海業等の取組実施に向けて、水産庁が、個別に助言や海業の推進に関する情報提供等を行い、取組を積極的に支援する。(3月)

 

10位
岩谷産業が水素燃料電池船「まほろば」を完成させる
産業・家庭用ガス専門商社・岩谷産業が、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)で運航する水素燃料電池船「まほろば」の完成を発表した。二酸化炭素(CO2)排出ゼロの水素燃料電池船を生かし、万博で環境技術の高さを世界にアピールする。「まほろば」は全長33メートル、幅8メートル。2階建てで最大150人が乗船できる。水素と酸素を反応させて生まれる電気を動力源とする。

 

 

【10大ニュース講評】

 

マリンジャーナリスト会議
瀧 学(フリーライター/ソルトンライト・代表)
2024年は、能登半島地震という衝撃的なニュースではじまりました。
前年の2023年に取材で輪島を訪れたばかりでした。輪島周辺の海図を広げてみると、島や岩礁が散らばりそれらの周辺の海底地形はとても複雑に入り組んでいて、見るからに楽しそうな釣りができそうな海がありました。
お話を聞いた輪島のボートパーク(ボート保管施設)の担当者によると、輪島漁港の年間水揚げ高は、金沢よりも多く、石川県トップとのことでした。プレジャーボートはそれほど多いという印象はありませんでしたが、漁港には様々な漁船がびっしりと並んでいました。
北前船の船主および船員(船頭や水主)の居住地として栄えた天領黒島地区も見てきました。輪島は道路地図で見ると陸の孤島のようなイメージを抱くかもしれませんが、海から見れば、そこはどう考えたって便利この上ない一等地です。大阪と北海道を行き来していた北前船船主が居を構えていたことも頷けます。
なので、魚がたくさん獲れて、釣りにも大満足の海があって美味い魚が食べられるその輪島の港が地震によって使えなくなってしまったことはショックでした。
それでも年末が近づくと、少しばかり嬉しくなるニュースも飛びこんできました。本格的な漁ができずにいた輪島で、およそ10ヶ月ぶりに本格的な漁が再開されたというもので、そこにはたくさんの、立派なズワイガニの写真が添えられていました。
「おいしい輪島の水産物を食べてもらい、輪島港が頑張ることで、能登の皆さんに力を与えたい」(輪島漁協関係者の方のコメント)
東日本大震災の後で、岩手県のある方を通して耳にし、大いに共感したことばがあります。
「海は何があってもそこにある」
「何があっても私たちは海を見て生きる」
その言葉をかみしめて、新たな年を迎えたいと願います。

 

20年振りのオリンピックメダル
中村剛司 マリンジャーナリスト会議・座長
手放しでうれしいニュースが入る。パリ五輪セーリング競技で、珠玉の銀メダル獲得! 男女混合470級、岡田奎樹/吉岡美帆(トヨタ自動車東日本/ベネッセホールディングス)のペアによる快挙は、日本セーリング界にとって実に20年振りのメダルとなった。2004年アテネ五輪の男子470級、関 一人/轟 賢二郎の銅メダルから数えて20年、さらに1996年アトランタ五輪の女子470級、重 由美子/木下アリーシアの銀メダルから数えると、銀は28年ぶり。ちなみに重さん(2018年に逝去)は岡田選手の高校時代の恩師というエピソードも付け加えたい。
今回の10大ニュースでは、水上オートバイ(PWC)関連が2件。PWCの航行支援アプリの国内初導入と、日本の団体が初めてPWC国際大会を主催した話題だ。
2024年元旦の能登半島地震も決して忘れてはならない災害であった。地盤隆起で漁業やプレジャーボートシーンも大打撃を受けた。輪島では漁業再開の知らせもあり、胸をなでおろすとともに今後の動向に注視したい。
知床遊覧船沈没事故などを受けた船舶免許の特定操縦免許が改正は7位。水産庁が海業の推進取り組み地区を決定したニュースは9位と制度改正にも注目が集まった。
船舶の話題では、大分空港の連絡船、ホーバークラフトが15年ぶりに復活。さらに、岩谷産業が水素燃料電池船〈まほろば〉を進水させたこともうれしいニュースだ。
冒頭で触れたセーリングのニュースはもう二つ。木村啓嗣さん(24歳9カ月)が日本最年少記録更新。ヨットで東回り単独無寄港無補給世界一周を達成した。これは現在、ヴァンデ・グローブ(ヨットによる単独無寄港無補給世界一周レース)を戦っている白石康次郎さんの当時の記録を30年振りに更新した形だ。
もう一つ。日本人女性初のヨットによる単独無寄港世界一周(1991~1992年)を果たした今給黎教子さんの〈海連〉(バルティック35)が、日本船舶海洋工学会によって「ふね遺産」に登録されたニュース。過去には堀江謙一さんの〈マーメイド〉(キングフィッシャー19)や、練習帆船〈日本丸〉なども受賞した権威ある賞である。
講評にあたり、ヨットの話で始めて、ヨットの話で終わってしまい恐縮であるが、恐縮ついでにもうひとつ。ワールドセーリング(旧 際セーリング連盟)が毎年定める、セーリング競技に貢献した1人に贈られる「Beppe Croce Trophy」を日本人ではじめて齋藤愛子さんが受賞した。セーラーとしての活躍だけでなく、コロナ禍開催となった東京五輪での尽力も評価のひとつになった。10大ニュースには入らなかったが、ぜひ知ってほしく書かせていただいた。
 
MJCは、マリンレジャーの健全な発展と安全普及を目指す集まりである。しかし、ジャーナリストである以上、業界の動向に目を光らせときに警鐘を鳴らすことも役割の一つであると考え活動してきた。今回も大いに議論し、2024年を深く振り返ることができたことは有意義であった。
夢を追う若者たちの純粋なるパワーとその結果が、本人たちの意図を超えて世界をガラリと変えてしまう。そんな瞬間に立ち会えたことも、意味深い1年であった。